2022.07.20
清水塾 “熱中症”
当院の研修医は木曜日の朝に打ち合わせをしています。
救急・総合診療科清水医師と研修担当の事務員2名と私も参加しています。
ここでは誰かが症例を提示して、何が勉強になったかを共有しています。
私も脳外科以外の疾患は非常にお寒い状態ですので、これを機会に、一緒に勉強させてもらっています。
最後に風呂敷の広い清水医師から次につながる何らかのアドバイスをもらいます。
今回はこの“清水塾”での症例をご紹介します。途中でスペースを開けます。そこで立ち止まって、一緒に考えてください。
症例は20歳の男性。7月の暑い日、水泳実習中に頭痛と嘔気、手足のしびれを感じました。
体温は40℃。朝食は摂っていませんでした。救急車で来院しました。
来院時のバイタルは体温37.5℃、脈拍100回、血圧127/83mmHg、呼吸回数24回、SpO2 99%。
来院時の診察ではやはり、頭痛とだるさを訴えていました。
胸部は正常呼吸音、腹部の診察では、平坦で、筋性防御はなく、異常な腫瘤も触知しませんでしたが、自覚的には腹痛というよりは少しお腹の違和感を感じるとのことでした。
下痢はありませんでした。
以下は採血の結果です。
WBC 3.2×102/ml
好中球比58.4%
pH 7.49
pCO2 31.5mmHg
HCO3– 23.7mmol/L
ABS 1.7mmol/L
Glu 104mg/dL
ナトリウム141mEq/L
カリウム3.9mEq/L
カルシウム9.7mg/dL
CRP 6.29
皆さん、診断は何を考えますか。
当院の研修医も生食500mlで点滴を開始しました。果たしてそれだけで良いでしょうか。熱中症と考えて矛盾する検査値はありませんか?
熱中症ですぐに運ばれてきたにしては、CRP6.29は高すぎませんか?
こちらでは、頭痛が主兆候だったので、背景に髄膜炎があるかもと考えました。
項部硬直はありませんでしたが、腰椎穿刺をしました。髄液の初圧は15cm水柱で、水様透明でした。
途中から血液が混入してしまいましたが、髄膜炎は考えにくいと思われました。次はどうしますか?
腹部に違和感があったことから、胸腹部CT検査を行いました。
これで、上行結腸の浮腫状壁肥厚と回盲部領域のリンパ節肥厚が観察され、同部の急性腸炎も疑われて、入院となりました。
入院後には頭痛の他に、腹痛が顕著になりました。
このような経過、つまり腹痛よりも頭痛の方が先行する症状を呈するような場合には、サルモネラ感染症が多いそうです。
頭の片隅に入れておいてください。
さらに、〈熱中症〉を診断する際には背景疾患がないか?を必ず想起してください。
これはとても大切です。
多田剛
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